ぎゅっ…と、して?

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ぎゅっ…と、して?

 

ぎゅっ…と、して?

 

さまざまな『力』を持つ種族の住まう国、クィンタニア王国。

 

ライ族のティオは、自分一人ではどうしようもない悩みを抱えていた。

 

「このまま、一生一人なんて…嫌だ」

 

『力』のせいで伴侶が見つからないと思い悩むティオの元に、カラ族の男がやってきて ──。

 

 

※ この作品は「小説になろう」で発表していたものです。加筆修正して公開しています。

 

■ 目次 ■

 

 第1話 厄介すぎる『力』

 

 第2話 驚きの訪問者

 

 第3話 イズグルト国

 

 第4話 グィートの治療

 

 第5話 クロウの家へ

 

 第6話 打ち明け話

 

 第7話 ささやかなお願い

 

 第8話 不可解な変化

 

 第9話 雨の日の来客

 

 第10話 知らないことばかり

 

 第11話 セラグの噂

 

 第12話 銀色の影

 

 第13話 一夜明けて

 

 第14話 相談

 

 第15話 羞恥の事実

 

 第16話 自覚した恋

 

 第17話 告白

 

 第18話 ティオの涙

 

 第19話 不穏な霧

 

 第20話 見知らぬ部屋

 

 第21話 グィートの過去

 

 第22話 光の球と孤独な夜

 

 第23話 悲壮な決意

 

 第24話 死の匂い

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ二度目のここでの朝 ──。昨夜は食べ物の夢ばかり見て、眠った気がしないティオだったが、目が覚めると早速光の球を上げるべくベッドから起き上がった。歩くとふらつくし、放った光の球もそれほど高く上がらなくなってきている。結局昨日は夕方までに五回も集中してやって、気力も体力も消耗してしまって...

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前の話へ 目次へ 次の話へ(…ん…朝?)気がつくと、すでに太陽は空に上がっていたようだ。鳥の声も聞こえない味気ない朝に、ティオは軽く溜め息を吐いた。なかなか寝つけなかったが、朝方に少しはうとうとと眠ったらしい。頭痛は引いているが、もったりと重たい頭を起こすと、雲ひとつない空が目に入った。(知らせを…...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「相手の『力』を奪うか、『無』にしてしまう『力』だとしたらどうだ?」「…?」(目に見えない『力』って、そんな……)まさか、と苦笑しそうになったティオに、更にセラグは畳み掛けてきた。「カラ族は「空族」だろう? 「空族」はクウ族と言えなくもない。だとしたら、古に種族が二つに分か...

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前の話へ 目次へ 次の話へこの部屋の出入り口はここだけだが、歩み寄って手を伸ばしても、取っ手にはぎりぎり届かない距離だ。鎖が絶妙な長さで調整されていることに肩を落として、ティオは力なくベッドへと戻った。腰かけたベッドのスプリングは硬いが、新品で上質の手触りのシーツや毛布は買い揃えたのだろう。必要なも...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「っ!?」まさか、どうして?と思う間もなく、目の高さに上げられた手首を見て、ティオは目を見開いた。「それ……」「無粋なものだが、こんな役に立つものがあるとは、私もまだまだ勉強が必要だな。もちろん、君に必要なものは、揃えていくつもりだけどね」笑みを含んだセラグの声を聞きながら...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へからだの痛みは少しずつ和らいでいるが、胸の奥に宿った痛みは逆に増していくような気さえして……。ティオは唇を噛み締めながら、右手で自分の胸元をぎゅっと押さえつけた。その手に、新たな雫がぽたぽたと落ちていく。(…… あの時、こうして思いっきり泣きたかった……)それほど、クロウに...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へ温もりを知ってしまった今となっては、仮定の話でしかないが、今の倍以上の時間がかかったとしても、自分はクロウに惹かれていっただろう。(だって、こんな人、オレの周りにはいないから ──)すぐそばにある好きでたまらない男の横顔を、ティオはそっと見つめた。クロウとは何気ない会話でも...

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前の話へ 目次へ 次の話へ明けて翌日 ──。ティオはエファの書いたメモを眺めつつ、どう話を持っていこうか思案していた。結局、昨日はクロウの帰りは遅く、そのまま夕食となり、なしくずしに酒盛りになってしまった。前の晩にあまり眠れていなかったティオは、眠気に勝てずに早々にベッドに入ってしまい、クロウと話を...

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前の話へ 目次へ 次の話へそんなティオのこわばりをほぐすかのような優しい声が、ティオの耳に届く。「嫌ではないな。初めは驚いたが、クロウは私から見ても良い男だ。家族になったら嬉しい、と思うくらいに」「え…?」戸惑いながら上げた視線の先には、温かい声色と同じグィートの笑みがある。その言葉は自分の想いを否...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「じゃあ、愛人っていうのは?」『愛人』という単語に、グィートは思い切り眉をしかめた。その表情から、話をするのも嫌なくらいの嫌悪感が滲み出ている。と同時に、どうしてそんな言葉を口にするのか、と問う顔つきになった。「まさか、とは思うが、結婚相手が見つからないから、愛人……と?」...

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前の話へ 目次へ 次の話へいきなりとんでもない方角から降ってきたような話に、ティオはきょとんとしてしまった。ぽかんと口を開けたその様子に、コルトは小さく吹き出し、エファは微笑み、クロウは頭を掻く。「この前、雨が降っただろう? それで俺が借りていた部屋が雨漏りで水浸しになって、次に借りるところを探して...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「ロウ……」不安に震える声で、ティオはクロウの名を呼んだ。「ん?」と穏やかな顔で覗きこむクロウに、早く帰りたい、と目で訴える。か細い声と青い顔を体調が悪いせいと捉えたクロウは、労わるように軽く細い肩を叩くと、ティオのからだを横抱きにして立ち上がった。大股で馬のつないである柵...

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前の話へ 目次へ 次の話へ翌日はからっと晴れて、すがすがしい朝になったが、ティオの頭はぼんやりしていた。寝不足でしぱしぱした目をこすると、見えてきたクロウの家に視線をやる。栗毛の馬が柵に繋いであって、クロウがもう来ていることがわかった。(どんな顔をして会えばいいんだろ)もっと考える時間が欲しくて、雨...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「……」開いた口がふさがらない、とは、まさに今の状況だ。欲情とか、性欲とか、生々しい言葉に頬が熱くなる。ティオはわずかに口を開けたまま、魂が抜け出たような顔でジョアを見つめた。しかし、その目はジョアを見ていない。(オレがロウを好きって…? そんなこと…… )「そいつが気にな...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「…へえ…」ティオは、溜め息のような相槌を打つ。そこまでして強くなりたい人がいるのは驚きだが、自分がそういう噂の対象になっているのは心外だった。なんせ自分は『力』が強すぎて困っているのだから。だから、今そういう話を聞いても、同性同士の結婚というのは受け入れがたい気がする。「...

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前の話へ 目次へ 次の話へ「そうか。じゃあ、帰るか」「あ…っ」くるりと背を向けられて、ティオは反射的にその背中にすがりついた。勢いこんで、どんっと体当たりをしてしまう。「ぅおっ!」「ご、ごめんっ」謝りながらも、広い背中にぎゅっと抱きつく。とっさに背中からなら大丈夫かも、と思ったのだ。「ったく、おかし...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へ「……いきなり、すみません」そう言って頭を下げると、「いや」と気の抜けた声を出しながら、クロウは頭を掻いた。その顔には、悪いことをした、という謝罪の表情が浮かんでいる。それを見ると、ティオの胸は驚かせて申し訳なかった、という気持ちでいっぱいになった。(本当に、なんてバカなこ...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へティオの声に弾かれたように、クロウがティオに顔を向けた。その顔には「まずいことを言った」というような後悔が見てとれた。「っと、暗い話はやめだ。あんただって聞きたくはないだろうし」そうだろう?と苦笑するクロウに、ティオはなんと言ったらいいかわからず、作り笑顔を向けるしかない。...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へ無心に手を動かしていると、お腹がくぅと鳴って、ティオはもう昼時なんだと気づいた。まとめた瓦礫を外に出すついでにクロウを見ると、木材に腰掛けて腕で顔の汗を拭っているところだった。まだらに濡れたシャツや、額に張りついた髪がやけに官能的に見えて、ティオの胸がどきりと鳴る。ただそこ...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へ(また、触られた)初めて触れられた時と同じように、自分の頭に手をやって、ティオは俯いた。── この前と同じように、頭を撫でられた。あの大きな手で。無骨な手の感触を思い出すと、父親に撫でられたような感覚を覚えた。それも子供の頃の定かではない記憶の上に、クロウの手は、グィートと...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へエファは夕食の支度をするから、とキッチンへと向かったので、グィートの手伝いはティオにまかせるつもりなのだろう。これまでも、何回かは父親の施術に立ち会ったが、学校を卒業してからの本格的な修行はまだなので、ティオもこれが初回だ、と気を引き締める。治療師として独立する日のためにも...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へ夕方になると、ティオは家の中で落ち着いていることができずに、玄関の前の広場で道の向こうを眺めていた。小さな林の中にあるティオの家は、家の前の広場が行き止まりになっているため、ここに来るには道が一本しかない。ぽつんと一軒だけ建つ家以外はまばらな木々しかなく、見通しは抜群だ。足...

ぎゅっ…と、して?

前の話へ 目次へ 次の話へそんなことを何度も言われているうちに、授かった『力』自体をうとましく思うこともあった。男なら憧れてやまないその強さを、捨て去ってでも誰かのぬくもりを欲する自分がいる。(やっぱり旅に出るしかないのかな)それも、一人では実現できそうにない方法だが、少なくとも一年以内には相手を見...

ぎゅっ…と、して?

目次へ 次の話へ「今日はいつも以上に落ちこんでるけど、大丈夫か〜?」本当に心配しているのかどうか疑問な口調の問いかけが、少し離れたところから聞こえる。相手にするのも面倒だと思いながら、でも誰かに愚痴を聴いてほしいと思い直して、ティオはゆっくりと伏せていた顔を上げた。後ろ向きに座って、前の自分の机に背...

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